マンホールトイレは被災地やイベントなどで重宝される仮設トイレといわれています。現地のマンホールに直接排泄物を流すため、汲み取りが必要ありません。
そこで、今回はマンホールトイレの基本情報とデメリットについて紹介します。ぜひご活用ください。
マンホールトイレの特徴
マンホールトイレとは、現地にあるマンホールを利用した仮設トイレの一種で、被災地のトイレ問題を解決できる手段として考えられています。
生活のストレスに関係しているトイレ
避難所では、3日経過した時点で欲しい設備の上位にトイレが挙げられています。
災害による深刻な被害の約3割は、避難所での生活に伴うストレスに起因するとされています。
これは、断水でトイレが使えないことを心配して水分補給を控えるケースや、慣れない環境や人間関係による疲労がたまることが原因です。
そのため、プライベート空間であるトイレ問題は、被災地における深刻な問題として扱われています。
しかし、現実問題としては通常の仮設トイレは設置に時間がかかる場合が多く、より迅速な対応が求められています。
設置と利用方法
マンホールトイレの設置方法はマニュアル化されており、訓練すれば多くの人が設置できます。
まずはマンホールの蓋を外し、その上に便器を設置します。トイレの周囲はテントの場合が多いようです。
次に、下水道管の上流部分にある注水用のマンホールから水を入れ、排泄物を流す準備を整えます。学校の場合、プールの水が使用でき、電動ポンプと発電機により注水が可能です。注水が完了したら使用できます。
約500人が使用したら、下水道管の下流にある弁を開けて水を排水します。
下水道管の中にある水がなくなったら弁を閉め、注水用のマンホールから水を注入するのです。
水をためてトイレを使用した後、下流の弁を開けて排水し、弁を閉めて給水するという操作を繰り返すことで稼働します。
マンホールトイレのメリット
マンホールトイレには、一般的な仮設トイレにはない多くのメリットがあります。
準備のしやすさや利便性について解説するので、ぜひ参考にしてください。
大勢の人が利用可能
マンホールトイレは多くの人が利用可能です。
仮設トイレの場合は、中にあるものを汲み取らないと使用できなくなりますが、マンホールトイレの場合は、容量いっぱいまで排泄物がたまっても、弁を開いて流せばリセットできます。
再度利用する場合は、下流の弁を閉め、注水用のマンホールから注入すればよいため、仮設トイレのように、大掛かりな作業が必要ありません。
このようにマンホールトイレは大勢の人が利用できるトイレです。
段差がない
マンホールトイレは、段差がない設備といえます。仮設トイレは、設置すると構造上必ず段差ができます。
しかし、マンホールトイレの場合はマンホールの上に便器を設置し、周囲をテントで囲うため段差ができないか非常に小さい状態なのです。段差につまずいて怪我する心配がありません。
また、車椅子の人も安心して利用できる設備です。子供やお年寄りにとっても安全に利用できます。
迅速に準備できる
マンホールトイレは、仮設トイレに比べて迅速に準備ができます。
仮設トイレは設備の搬送が必要のため、準備に時間がかかる場合もあります。
しかし、マンホールトイレは部品を保存しておけばすぐに利用できるため、迅速な展開が可能です。
現場では、すぐに利用できたという記録があります。
また、マンホールトイレの設置はマニュアル化されており整備や運用のための訓練なども実施されているため、多くの現場で迅速に展開できるでしょう。
訓練では、マンホールトイレの使用に関する判断や具体的な確認方法のほか、組み立て訓練を実施します。
マンホールの開け方・弁の使い方・ポンプの動作確認も実施するため、包括的なトレーニングにより非常時に備えているのです。
訓練のほかにも、地域のイベントで実際にマンホールトイレを組み立てて活用しています。
これにより、緊急時でも迅速な対応が可能となるでしょう。
マンホールトイレのデメリット
マンホールトイレにもデメリットは存在します。具体的には、多くの人が使うために発生する問題が大半のようです。
以下に、マンホールトイレにおける具体的な問題点を解説します。
便器内に汚れが溜まる
マンホールトイレは便器の中に汚れがたまる欠点があります。便器内に水が流れないためです。紙や排泄物が詰まる可能性があります。
この問題の解決方法は、水を流す設備を工夫して作ることです。別途容器を設け、そこに水をためておき、トイレットペーパーや排泄物を流すようにしましょう。
ただし、水の使用が限られた環境下ではこの方法をよく検討する必要があります。
便座自体の汚れ
マンホールトイレは便座部分の汚れにも注意しましょう。便座との接触を避けるために腰を浮かせて使う人がいるため、便座が汚れやすくなる場合があります。
この問題は除菌シートや清掃用具の準備で解決が期待できます。長い間管理するためには、スプレータイプの除菌剤をトイレットペーパーに吹きかけて使う方法がおすすめです。
テント内の照明が必要
テント内に照明がないと手元が見えず夜間の使用が困難になります。また、トイレまでの誘導灯がないと転倒の危険があります。
そのため、テント内以外に照明を設置するといいでしょう。夜間は1人で行動せず、防犯ブザーを持って歩くことも検討してください。
強風でテントのピンが抜ける
強風を受けたことが原因でテントを固定しているピンが抜ける場合があります。地面が土のところに設置すると、固定ピンが徐々に緩み抜けてくる危険性があるため、注意が必要です。
ピンの緩みを抑制するには土嚢といった重りを活用するといいでしょう。ピンも使用する前に点検し破損がないことを確認してください。
電動ポンプが必要
人数が多いと人力で対応しきれないため、電動ポンプで注水用の水を汲み上げる必要があります。
そのため、発電機とセットで準備しておくといいでしょう。ポンプがない地域は購入を検討してみてください。
下水道の破損で使用不可
マンホールトイレは下水道設備を利用する仮設トイレです。下水道が震災で機能しない場合は利用できません。
震災による水道管復旧には数日から1ヶ月以上かかることもあります。この場合は簡易トイレなど別の方法を検討すべきです。
また、マンホールトイレが設置できても、すぐ利用できるとも限らないため、簡易トイレの備えは必要といえるでしょう。
マンホールトイレを快適に活用する方法
マンホールトイレは便利なものですが、継続して快適性を保つには工夫が必要です。
以下に、具体的な方法を紹介します。
日よけと雨除けを設置
日よけや雨よけなどを設置すると快適に利用できます。体の不自由な人の負担が軽減できるからです。
また、雨よけがあればテントに直接雨が当たらないため泥や雨水による汚れも回避できます。
トイレの中や便座が汚れないため、精神的なストレスも低減すると考えられます。
外にスペースを設ける
太陽の光や雨を遮るスペースが広がればトイレを待っている時間でも快適に過ごせますし、コミュニケーションを取り合って防犯対策にもなるでしょう。
このように、外のスペースを設けることで、トイレの待ち時間対策や防犯対策に役立ちます。
中の設備を可能な限り充実させる
トイレの室内をできる限り充実させると快適に過ごせます。
たとえば予備のトイレットペーパーを設置すれば紙切れの心配がありません。防臭剤があれば臭いに対しての心配が軽減できます。
荷物を置く棚があれば、バッグや財布といったものを中に持って行っても邪魔になりません。防犯ブザーがあれば防犯にもなります。
まとめ
マンホールトイレは緊急時のトイレ不足における解決策として考えられています。下水道が機能している場所に設置できる仮設トイレの一種として扱われます。
中水用のマンホールから水を供給できれば、下水道中の水を流せるため、汲み取りが不要です。
段差がほとんどなく迅速に設置できるため、安全面と利便性において優れた性能を発揮しています。
しかし、便器内に汚れが溜まりやすかったり、テント内に照明を設ける手間があったりなどデメリットも存在します。十分に対策してから活用するといいでしょう。
