
仮設トイレには、主に水洗トイレ、簡易水洗トイレ、非水洗トイレ、バイオトイレの4種類が存在します。
本記事では、それぞれの仮設トイレの特徴について、メリットやデメリットを交えながら紹介していきます。
仮設トイレの種類
こちらでは、以下の4種類の仮設トイレについて解説します。
- ・水洗トイレ
- ・簡易水洗トイレ
- ・非水洗トイレ
- ・バイオトイレ
それぞれメリット・デメリットもあわせて解説するので、仮設トイレの利用を検討している方は参考にしてみてください。
水洗トイレ
水洗トイレは、一般家庭のトイレと同じように利用できるタイプの仮設トイレです。水道から洗浄用水が流れ、下水道や浄化槽に排水される仕組みとなっています。浄化槽とは、し尿や生活排水を浄化・処理し、河川等へ放流するための設備のことです。
衛生的でニオイも少ないため、快適に利用できます。仮設トイレのなかでも活用シーンが広がっている種類です。
メリット
水洗トイレのメリットを3つ紹介します。1つ目は、家庭用トイレと同じように利用できるという点です。2つ目は、衛生的であるという点です。3つ目は、汲み取りが不要であるという点です。
いずれも、上下水道が整っているという点に関連したメリットといえます。
デメリット
続いて、水洗トイレのデメリットを4つ紹介します。
1つ目は、水道設備が必要であるという点です。水洗トイレは、上下水道や浄化槽の環境が整っている場所にしか設置できないからです。そのため、設置したい場所にこれらの設備がない場合には、給排水の工事が必要になります。
2つ目は、基礎工事や配管工事が必要であるという点です。水洗トイレは、仮設トイレのなかでもしっかりとした造りになっています。そのため、設置には大掛かりな工事が不可欠です。
3つ目は、工事業者の手配が必要になるという点です。上記のような各種工事を行ってもらうための手配をしなければなりません。
4つ目は、凍結すると利用できないという点です。屋外に設置されている簡易トイレは、外気温の影響を受けやすい傾向にあります。配管内の水が凍ってしまうと、せっかくの水洗トイレが意味をなさなくなってしまいます。冬場や寒い地域にお住まいの方はとくに、注意と対策が必要です。
簡易水洗トイレ
簡易水洗トイレは、水洗トイレよりも少ない水量で流す簡易的なトイレです。一度の排泄を流すために使用される水量は、400ml〜450mlです。
排泄物はタンクに溜められるので、定期的に汲み取る必要があります。水は、タンクに貯めるタイプと、水道設備に接続するタイプの2種類があります。
メリット
簡易水洗トイレのメリットを3つ紹介します。
1つ目は、比較的快適に利用できるという点です。汲み取り式とはいえ、トイレの部分は水洗トイレとほとんど同じような造りや仕組みになっています。そのため、非水洗トイレよりも悪臭を抑えることができるのです。
2つ目は、低コストで大量設置が可能という点です。これは、簡易水洗トイレの価格が安く、水道工事も不要であることが大きな理由です。
3つ目は、排水設備がない場所にも設置できるという点です。汲み取り式なので、下水道や浄化槽を必要としません。
デメリット
簡易水洗トイレのデメリットを3つ紹介します。
1つ目は、定期的な汲み取りが必要であるという点です。2つ目は、設置場所によっては転倒防止工事が必要であるという点です。
非水洗トイレ
非水洗トイレは、通称「ボットントイレ」と呼ばれる、日本に昔からあるタイプのトイレです。排泄物をタンクに溜めて、定期的に汲み取りを行います。
前述したような水洗トイレや簡易水洗トイレの普及に伴い設置数は減少しているものの、設置場所の環境によっては現在も利用されています。
メリット
非水洗トイレのメリットを3つ紹介します。
1つ目は、水道工事が不要であるという点です。設置場所を選ばずに利用できます。2つ目は、価格が安いという点です。3つ目は、移動が簡単であるという点です。
デメリット
非水洗トイレのデメリットを3つ紹介します。
1つ目は、定期的に汲み取りが必要であるという点です。2つ目は、衛生面で劣るという点です。悪臭や虫の発生も心配の要素です。3つ目は、転倒防止工事が必要であるという点です。
バイオトイレ
バイオトイレは、微生物の力で排泄物を分解するタイプの仮設トイレです。処理された排せつ物は、農業や園芸用の肥料として活用することができるため、コンポスト(堆肥)トイレとも呼ばれています。
電気さえあれば、場所を選ばずに設置できます。基本的には排泄物の汲み取りの必要はありませんが、微生物の処理能力に応じて、汲み取りやトイレの利用制限をすることもあります。
あまり聞き馴染みはないかと思いますが、環境保全への取り組みが進む欧米諸国では、国定自然公園や沿道施設をはじめ、一部地域の別荘などにも活用されているのです。日本においても、水が使えない場所や下水道設備がない地域などに設置されることが増えてきています。
仕組み
バイオトイレでは、人間の腸内バクテリアや自然界の微生物の働きを利用することによって、排泄物を二酸化炭素と水に分解し、処理を行います。
便器の下には、おがくず、木チップ、そばがらなどが敷き詰められた処理槽が設置されています。これらが微生物の菌床になり、落ちてきた排泄物を分解していくのです。
まずは、おがくず、木チップ、そばがらなどの菌床に、し尿などの水分を吸着させて蒸発しやすい環境をつくります。そのうえで、電気ヒーターを使って温度管理を行いながら槽内のスクリューによって攪拌し、酸素を取り込みます。こうして適切な温度と十分な空気を保つことによって、好気性微生物の活動を活発化させていくのです。
温度としては、50度を超えたあたりから徐々に水分の蒸発が始まり、最終的な排泄物の質量はもとの10%以下にまで減少します。こうして残った排泄物は、自然由来の有機肥料へと生まれ変わるのです。
メリット
まずは、バイオトイレのメリットを4つ紹介します。
1つ目は、ニオイが少ないという点です。無臭に近い状態を保つことができます。近年では、建設現場などへの導入も期待されています。
2つ目は、給排水の工事が不要であるという点です。水の確保が難しい山岳地域や離島などにも設置が可能となります。3つ目は、凍結の心配がないという点です。
4つ目は、堆肥を生成できるという点です。仮設トイレの役割を果たしながら、排泄物を資源に変えることができます。発酵の際に大腸菌や寄生虫なども死滅するので、安心して使用することができます。
デメリット
次に、バイオトイレのデメリットを4つ紹介します。
1つ目は、電源が必要であるという点です。場合によっては、電気の配線工事が必要になるケースもあります。
2つ目は、1日の利用回数に制限があるということです。これは、微生物の処理能力に応じて決まります。連続して大量の排泄物が投じられてしまうと、分解処理しきれない残りかすが蓄積してしまいます。場合によっては悪臭が発生してしまうこともあるので、注意と管理が必要です。
3つ目は、比較的割高であるという点です。他の種類の仮設トイレよりも、ランニングコストがかかってしまうという特徴があります。
4つ目は、メンテナンスが必要であるという点です。おがくずを使用するタイプのバイオトイレでは、年に数回の交換が必要になります。
仮設トイレの選び方
仮設トイレを選ぶ際は、使用する場所や環境に応じたタイプを選ぶことが大切です。設置場所の条件や利用人数、用途に応じて最適な仮設トイレは異なります。ここでは、3つの基準をもとに、さまざまなシーンに適した仮設トイレの選び方をご紹介します。
工事の有無
仮設トイレを選ぶ際には、設置にあたって工事が必要かどうかを確認することが重要です。水道や下水道と接続する水洗式の仮設トイレを使用する場合、給排水のための配管工事が必要となります。その分、使用感は家庭用トイレに近く快適ですが、設置場所や工事の可否によっては設置できないこともあります。
一方で、非水洗式やバイオトイレなどは、水道や下水道を使わず便槽に汚物をためるため、工事不要で設置が可能です。仮設トイレを導入する前に、現場の環境や工事の可否を調査し、コストや利便性を踏まえて適切なタイプを選ぶことが大切です。
衛生面
仮設トイレを選ぶ際、衛生面や臭い対策に優れた仮設トイレを選ぶこともポイントです。特に利用者が多い場所や、長期間の使用を想定する場合は、清潔で快適な環境を保つことが求められます。
水洗トイレは汚物を下水道へ直接流すため、臭いが発生しにくく、衛生面でも優れています。また、バイオトイレは微生物の力で汚物や臭気の原因を分解・処理するため、工事不要ながらも比較的衛生的に使用できます。
一方で、汲み取り式の簡易水洗トイレや非水洗トイレは、便槽内に汚物を溜める仕組み上、臭いが発生しやすく、利用者によっては不快に感じることもあります。衛生環境を保つなら、臭いの発生を抑えられる水洗式やバイオトイレを選ぶと良いでしょう。
汲み取りの有無
仮設トイレには、汚物を便槽に溜める「汲み取り式」があり、簡易水洗トイレや非水洗トイレがこれに該当します。このタイプは水道・下水道の接続が不要で手軽に設置できますが、定期的な汲み取り作業が必要です。
使用者の人数や使用頻度によって汲み取りの回数が変わるため、運用面での計画が大切になります。各自治体では指定の汲み取り業者が決まっており、便槽が満杯に近づいた段階で連絡・手配することになります。
汲み取り式を選ぶ場合は、便槽の容量も重要なポイントになります。容量が少ないと汲み取り頻度が増え、手間やコストがかさむため、使用者が多い現場では容量が大きいタイプを選ぶのがおすすめです。
【FAQ】よくある質問
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Q簡易水洗トイレとは?A簡易水洗トイレは、水洗トイレよりも少ない水量で流す簡易的なトイレです。低コストで大量設置が可能ですが、設置場所によっては転倒防止工事が必要なようです。
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Q水洗トイレとは?A一般家庭のトイレと同じように利用できるタイプの仮設トイレです。家庭用トイレと同じように利用できて衛生的ですが、上下水道や浄化槽の環境が整っている場所に設置する必要があります。
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Qバイオトイレとは?Aバイオトイレは、微生物の力で排泄物を分解するタイプの仮設トイレです。無臭に近い状態を保つことができ、水の確保が難しい山岳地域や離島などにも設置が可能ですが、メンテナンスが必要でメンテナンスコストがかかるようです。
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Q非水洗トイレとは?A非水洗トイレは、通称「ボットントイレ」と呼ばれる、日本に昔からあるタイプの水を使わずに排泄物をタンクに溜めるトイレのことをいいます。
まとめ
いかがでしたか。仮設トイレは、洗浄方法や排泄物の処理方法などによって、さまざまな種類に分類されることがお分かりいただけたかと思います。
それぞれの仮設トイレにはメリットとデメリットがあるので、設置を検討する際には、各要素の重要度合いを決めて選ぶことをおすすめします。